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歯周病の病因論とメカニズム

- 2018年3月号 -

歯周病という言葉を聞いたことがない人はほとんどいないのではないでしょか?

 

歯周病に関する予防やメンテナンスだけでなく、他の疾患とのかかわりなど様々な形でテレビやCMなどに取り上げられ、認知度はかなり高いものになってきました。

もちろん歯科でも様々な技術・器材が進歩し、その手法・手技に関しては同様に発達してきました。

 

しかし、一方で病因論に関しては、私たち歯科医師ですら意外と知る機会が少ないように思います。

歯周病の病因に関して、今、どこまでわかっていて、何がわかっていないのでしょうか?

 

歯周病は感染性の疾患なので、まず歯周病菌が感染しないと生じません。

 

アメリカで2000年ごろに「小・中学生の口の中には歯周病菌がおらず、10代後半に感染する」という論文が出されました。

 

日本でもそれに興味をもった先生が大阪大学付属病院の小児歯科患者を徹底的に調べた結果、やはり歯周病菌は検出されなかったそうです。

 

私が学生ぐらいの頃、3~4歳ぐらいで大まかな個人の口腔内細菌叢が完成すると習いました。しかし、今は20歳ぐらいに個人の口腔細菌叢が完成され、その後はあまり変わらないと言われているようです。

 

では、小さい頃にはいなかったこの歯周病菌はどこから来るのでしょうか?

 

実は、これがまだはっきりしないようです

 

以前、可能性が最も高いと考えられていたのは家族感染ですが、小児の口腔内で歯周病菌が検出されないとなると、その可能性は思ったほど高くなさそうです。キスや誰かの唾液のついた食べ物などと推測はしているようですが、未だにはっきりわかっていないようです。

勿論、個人差はあるとは思いますが、いまだに歯周菌に感染するそのルートすらはっきりしないというのは、少し驚きです。

 

では、メカニズムはどのようになっているのでしょうか?

 

歯周病菌に感染後、プラークや歯肉の中でおとなしくしていた歯周病菌が歯肉からの出血などをきっかけに、栄養となる血液によって数千倍に増殖し、当初は低かったプラークの病原性が突然高くなり、その代謝産物によって作られるプラークの骨格も粘り強い状態に変化し、歯周病がおこります。

病因とは違い、このメカニズムははっきりしているようです。

 

この歯周病のメカニズムを研究されている先生がこのように述べています。

「たとえば、抗生物質や特定の治療法で歯周病菌を駆逐できると思われるかもしれませんが、現在の科学・材料では歯周病菌を駆逐できません」

おそらくこれは「飲み薬で歯周病を治す」とうたっているある治療法に関して警告しているものだと思います。

 

病因論までさかのぼれば、実は今、私たちがやっている歯周病の治療は対処療法とも言えます。原因の歯周病菌を感染させるルートがはっきりすれば、それを断つことが最も効果的だと思うからです。

 

いつかそのルートが解明されれば、歯周病の罹患率もかなり低下するのではないでしょうか?

大学の先生方、頑張ってください。

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