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ムーシールド

- 2011年8月号 -

ムーシールドは、ご存知でしょうか?

乳歯の段階で、前歯のかみ合わせが逆、いわゆる受け口(反対咬合)の治療装置です。

矯正の一種ですが、通常の矯正とはその機能の仕方が異なります。

 

当院は小児の患者は少ないのですが、通院されている患者さんから意外と質問が多いので、ムーシールドについての説明を開発者の先生のHPからの抜粋も含めて載せてみました。

 

乳歯期の反対咬合に関しては、様々な考えがあります。

2歳における反対咬合は半数近くが自然治癒するのに対し、3歳で反対咬合の場合、自然治癒するのは6%~15%程度しかないことがわかりました。

しかし、以前は3~4歳時に積極的に矯正を行うことは少なく、永久歯が生えると口の中に針金を通す本格的な矯正をしなければならないケースが多くなり、費用も時間もかかってしまいます。

 

通常の矯正方法では3才からはじめること難しく、そのため永久歯に生え変わるまで、様子を見ましょうという考えの先生もいます。その考えは決して間違っているわけではありませんが、根本的には大人の歯になって治らなければ矯正をしましょうという前提があると思います。

 

一方で、乳歯期の反対咬合の原因の一つに、筋機能上の問題が大きくかかわっていることがよくあります。反対咬合の筋機能上の問題点は、以下の3点と考えられます。

「締め付けの強い上唇」、「緩い下唇」、「低い舌の位置」です。

締め付けのきつい上唇は、上顎の前方への成長を抑え込み、後方へ押す力として機能します。また、「緩い下唇」は下顎の前方への成長を許容していると考えられます。「低い舌の位置」は、ものを飲み込む際、その都度、下顎を前方へ押しだす圧力として機能すると考えられます。

 

乳歯期の反対咬合の問題 

審美的問題:反対咬合特有の顔貌

機能的問題:サ行・タ行の発音に特徴的な舌足らずのしゃべり方

成長的問題:通常、下顎に比べ上顎は先に成長が起こります。反対咬合を放置すると成長が抑制される可能性があります。

 

ムーシールドの作用

上記で述べたように、筋機能のアンバランスは、不正咬合をつくります。バランスを整え、調和を取り戻せば、不正咬合は回復する可能性があります。「ムーシールド」は、上唇からの後方への圧力、舌からの前方への圧力を除外する機能を持っています。そのように、バランスを取り戻す器具が、機能的顎矯正装置「ムーシールド」です。

 

2011.08.01

使用期間                     

ムーシールド治療法は、およそ1年間を目標に治療します。就寝時、および在宅時に装着していただくことになります。

しかし、成長がスパートすること再治療を必要とする場合があります。定期健診は重要です。女子は15~16才。男子は17~18才まで成長します。その頃まで、定期健診を続けることが理想です。

 

最後に私個人の意見として

ムーシールドを使用することにより、使用者の6~7割以上がその後の本格矯正を必要としなかったという論文を読んだことがあります。かみ合わせを診査したとき、個々の歯を動かすことが不可能なムーシールドでは厳密なかみ合わせの調整は不可能なように思えます。しかし、大きくずれたかみ合わせを少なくとも許容範囲にまで減少できたということではないでしょうか。

元来、3~4歳に矯正治療を行うことは難しく、経過観察という手段が取られ、そして年齢が上がった時に矯正を行うということが多かったように思います。もちろんそれには意義がありますし、決して誤った方法ではないと考えられます。

しかし、一方で早期に治療で介入し、本格矯正を回避できれば、お子さんの精神的・時間的にも料金的にもかなりの負担を回避できると考えます。

ムーシールドを使えば、すべての症例で改善が望めるといったものではありません。しかし、少なくとも口腔周囲の筋肉等の環境を整え、将来本格矯正に移る可能性を下げるとなれば、十分、意義があるものと考えます。

 

ムーシールド開発者の先生のHPより抜粋

「適切な時期に、短期間で治療する」という事は理想です。しかし、反対咬合者に、その言葉を当てはめることは困難と 考えられます。反対咬合症例においては、定期健診を継続し、治療の要、不要を、その都度、再検討する必要があります。 それは、反対咬合者への関わりが、成長する全期間に渡る事を意味します。

少なくとも、現時点では、「反対咬合症例は、 適切な時期に、何回か、短期間治療する可能性がある」と表現するのが妥当と考えられます。反対咬合の治療は、 「早期初期治療」「Ⅰ期治療」「Ⅱ期治療」が想定されます。そのことを、 術者、患者(保護者)の双方が充分に 理解して、治療が開始されるべきです。 いずれにせよ、筋機能のアンバランスを整える事を念頭に置き、低年齢時期に、出来るだけ負担の少ない方法で、関わりを持つ ことが必要と考えられます。すなわち、「早期初期治療」の役割は、「逆被蓋という成長を阻害する因子」を除去し、 「正しい成長発育ラインに乗せる事」にあると考えています

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