スイスチーズ理論
- 2019年10月号 -
先日、久しぶりに飲んだ先生がある事を思い出し、憤慨していました。
普段の診療の中で、うっかりミスが生じないように医院内で様々な決め事・約束事を作っているそうです。
その内容に関して、他の先生に
「そんな細かいことを決めなくても、見ればわかるだろう」
「気をつければいいだけだろ」と言われたそうです。
話を聞くと、「確かにずいぶんと細かいかも」とも思いましたが、基本的には当院も同様に様々な決め事もありますので、根本的な考えは同じはずです。
おそらく批判した先生は、スライスチーズモデル(もしくはスライスチーズ理論)を知らないのだろうなと思います。
以前、どこかの大学病院で患者の取り違えが生じた時に、よく耳にした言葉です。
「トムとジェリー」などで良く出てきた穴が開いたチーズを思い浮かべます。
この穴が、いわゆるケアレスミスなどで生じる問題だと思ってください。
1個のスライスチーズでは穴によって、問題が素通りしてしまいます。
この穴をできるだけ小さくする、もしくは無くす努力は当然必要ですが、それらを完全になくすにはかなりの苦労が必要となります。
では、どうするか?
スライスチーズを数枚重ねます。
穴が開いていた部分も、他のスライスチーズではふさがれているため素通りできず、仮に何かの問題が生じた時にそこで気づくことができます。
つまり、チェック機構や決まり事を複数設けることにより、エラーやミスを極力事前に防ぐという考え方です。
日々の診療では時間に追われるため、どうしてもうっかりという事が生じやすくなります。
これらを防ぐ方法として、提唱されていたのがスライスチーズ理論になります。
「見ればわかるだろう」と言った先生が、こういった問題を起こさなければいいけどなと感じます。