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インプラントは天然歯をこえるか?

- 2011年12月号 -

ある学会のその時のメインテーマがこれでした。

私も属している学会です。非常にメジャーな学会ですが、これを見た時「え?」と感じました。テーマを考えられた先生、申し訳ありません。クレームではありません。

 

ここからは、私個人の意見です。

今まで何度も述べてきたように、インプラントは非常に優れた治療法だと思います。

現在、歯を失った時に、機能や審美を含めて治療法の第一選択となるものだと私も考えます。

しかし、「特別な理由がない限り、もともとの自分の歯の性能を上回るものなど存在しない」と考えています。もちろん、親知らずのように斜めに生えてきたりなどの例外を除きです。

だからこそ、歯科医師は歯を保存できるように治療し、予防に努めているのではないでしょうか?

 

もともとの自分の歯には血液供給があるため、周囲の歯肉や骨に対する多少の自己修復能力があります。また、神経があるため、虫歯など問題が大きくなると、痛みとして警告してくれます。歯が揺れる場合も、無理な力がかかった時にその力を逃がし、治療により改善されると揺れが収まってくることも多々あります。

物ではなく、体の一部としての歯は、とてもよくできています。

 

私は、このテーマを見た時に、ある先生の顔が浮かびました。

その先生は、以前、歯科雑誌に治療症例を乗せた時、他の先生にその治療を否定されたそうです。否定した先生は、アンチインプラントと言えばよいのでしょうか、インプラント治療を否定する立場をとられている先生でした。

以前は行われていたさまざまな義歯などがインプラントの登場によって、かなり衰退していった事を考えても、今や歯科の治療において、インプラントを否定することは難しいように思います。

又聞きになるので、偏った意見となる可能性もありますが、その症例の経緯等を考えると、私自身はインプラントを用いた治療は適切であったと感じます。

そして、実際治療した先生も自分自身の治療に落ち度はないと思うと付けた上で、以下のように述べていました。

「私の治療を批判した○○先生の考え方には、私は共感できないし、今でも自分自身の診断は正しかったと考えている。ただ、その先生が言った言葉の中で、考えさせられる言葉もあった。それは「インプラントを行わなくても、ちゃんとした素材でしっかりと調整すれば、入れ歯であろうと物は咬めるはずだ。」という言葉です。インプラントと入れ歯を比べた時に、インプラントの方がはるかに分があるのは、インプラントをやられている先生なら分かるはずです。ただ、インプラントという治療法を手に入れてしまったために、歯を残す大切さを、私たちもついつい忘れがちになっていないだろうか?」とおっしゃっていました。

 

以前、インプラントをかなり手広くやられている先生の医院に見学に行った時に、抜歯とする歯の判断基準が私とはあまりに違い、びっくりした記憶があります。私ならば保存するだろうという歯も複数が抜歯とされていました。

抜歯の判断基準は歯科医師それぞれで異なるとは思います。ただ、あまりに容易に抜歯という選択がなされているように感じました。

 

おそらく、この先生もその事が言いたいのだろうと感じました。

健全な歯の機能のすごさ、歯を残す大切さ、患者さんだけでなく、歯科医師も決して忘れてはいけない事だと思います。

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